AI時代へ向けて育成すべきはAI人材か?|masanork|note

AI時代へ向けて育成すべきはAI人材か?|masanork|note
今からカリキュラムをいじったところで2030年くらいにならないとAIネイティブな新入社員は入ってこないし、その頃まで深層学習が流行っているのか、NVidiaが残ってるのか、PythonやTensorFlowが広く使われているのか、GAFAがどうなっているかなんてさっぱり見当がつかない

私がIT関係と知るや「RとかPythonが大嫌いなんですけど、何であんなの急に教えるようになったんですか」と話しかけられて、AI教育のビッグウェーブが現に学生たちのキャンパスライフを変えているんだな、にわか仕立てのAI教育を教える方も受ける方もかわいそうだ

統計不正を何とかすることの方がずっと重要である。そして政府統計を扱っているのは今のところRでもPythonでもなくCOBOLであって、報道によると孤独な職員がテストも何もやらずにソースコードを弄っているらしい。統計は過去との一貫性が大事だから、そうそうモダンな環境でリファクタリングする訳にもいかない。そんなところに10年後、中学から「AI教育」を受けて大学ではKaggleで鳴らしたピッカピカのデータサイエンティストが入省して、COBOLの文法から学んで仕様書のないスパゲッティコードを前に絶望することになれば、全くもって笑い話では済まされない。

AIで日本が米国に負けたのは、平均的な国民の数学リテラシーが低いからではなく、日本企業が消費者向けIT産業で総崩れしてしまってデータを集められず、データを分析する環境に投資できず、データサイエンスを実践できる場がなかったからである。余裕がないから基礎研究は縮小し、ニーズがないから技術も育たなかった。

太平洋戦争 の時と同じように、私たちは兵站で米国に負けたのである。別に教育やら精神で負けたのではない。AIは設備産業であって、クラウドインフラ、チップ、巨大なシステムを維持更新するためのプロジェクト管理やソフトウェア工学をはじめとして、データが集まるビジネスモデルや広告をはじめとしたエコシステムと収益構造、プライバシーとデータ流通を支える法制度や法務渉外スタッフなど、様々な分野の専門知を結集した総力戦である。データサイエンティストとは、そういった膨大な手足によって支えられた一握りの作戦参謀のような役割ではないか。どんなに優秀な作戦参謀を育てたところで、訓練された兵士と武器、兵站がなければ戦争には勝てない。

データサイエンティストを育てる以前に、データがあってもデータに基づいて正しい意志決定ができない社会構造から改める必要がある。

#20190519 #0519

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筆者について

jigsaw(ジグソウ、1991年6月12日-)は日本のプログラマ、会社代表。本名は小林貴也(こばやし たかや)。主にウェブ、フロントエンド領域で活動している。カミング・スーン合同会社の代表社員。
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