バス停 — 2019

バス停 — 2019
まっ黒な石が2つ積み重なっている簡素な墓だった。遺体を埋める墓を掘っているときに出土した石だという。人間の手が加わらなければ泥まみれの石がふたつだけ重なることがないので、かろうじてそれが何かの記念碑とわかる。そういった報告が、普段行う事務の延長線上にあるかのように、ぽこんと送られてきた。ぽこんと送ろうとして、実際にぽこんと送られてきたのだと思う。

最後に犬を見たのはこの夏だった。よろよろしていて、今年の冬を越せそうには思えなかった。はっきりいって死んでしまいそうだった。目も見えていなかったし、私がそこにいることもよくわかっていなかったので、まるで急に人間が現れたような反応を繰り返した。同じ世界にいるはずなのに、何百光年も先で待っているようだった。もう新しい写真を撮ることはできないけれど、文章ならいくらでもかける。

毎日少しずつ、息子は息子のベストを更新し続けている。この世に何も知らずに生まれてくるということがこんなに羨ましいことだったとは思わなかった。3ヶ月たった今では体重も倍近くになり、よく笑うようになったし、泣き叫ぶ声も大きくなってきた。最初に吸い込んだ空気はどんな味がしたんだろう。自分の声はどんなふうに聞こえるんだろうとか、そんなことばかり考える。いざ大人になってから、この一年どれくらいすばらしいことがあったか考えるのは難しいものだ。私が記憶を消してもう一度プレイしたいゲームだって、本当に記憶にないまま遊ぶことができる。こんなこともう人生で一度もできやしない、できやしないんだぞ、という。

bastei さん相変わらず圧巻の文章

#20191209 #1209

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筆者について

jigsaw(ジグソウ、1991年6月12日-)は日本のプログラマ、会社代表。本名は小林貴也(こばやし たかや)。主にウェブ、フロントエンド領域で活動している。カミング・スーン合同会社の代表社員。
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