『スター・ウォーズ9/スカイウォーカーの夜明け』感想。愛する者を死から救うということ - 社会の独房から

『スター・ウォーズ9/スカイウォーカーの夜明け』感想。愛する者を死から救うということ - 社会の独房から
賛否が割れた一本だったが、私は嫌いではなかった。
「今までのシリーズの良さは継承し、捨てるべきところは捨て、時代と共に価値観をアップデートさせながらも、本質を見失わず、『ディズニーのスターウォーズ』という物語を紡いでいきますよ」という意思表示だと受け取ったからだ。
ただ、そんな断固たる決意のもとディズニーが創作活動をしていると思っていた私の元にやってきた最新作が本作『スカイウォーカーの夜明け』
これが完全に『 フォースの覚醒 』路線に逆戻りである。
一体『最後のジェダイ』とは何だったんだ。

本作『スカイウォーカーの夜明け』では『最後のジェダイ』の要素いくつか投げ捨てられている。例えば
レイの親は何者でもない→実はパルパティーンの孫
ライトセーバー捨てる→ジェダイの武器は敬意を払うんだ(ルーク自体憑き物が落ちたのでギャグとして良かった)
ローズ登場時間が30分近く→5分ぐらいまで減少
レンのふざけたマスク壊す→わざわざ直す
フィンのパートナーはローズ→発展せず(フィンモテモテに)
ルークは心折れて隠居していた→隠居もしていたが実はランドと探し物を探していた
などなどである。一作でここまで方向転換するの凄い。『スターウォーズ フォースの覚醒』でJ・J・エイブラムス自身が広げた大風呂敷を自ら畳まなければならないし、ライアン・ジョンソンが搔き乱した『スターウォーズ 最後のジェダイ』の事後処理もしないといけない。更に物語を完結もさせつつ、ファンサービスも絶え間なく入れないといけない。それらを2時間ちょっとで終わらせろというディズニーの無茶振りに答えるJ・J・エイブラムスの汗と涙が滲み出ている結晶こそが本作の最大の魅力かもしれない(そもそもJ・エイブラムスって物語を広げるのは得意でも話を畳のは致命的に下手くそというイメージだったので、ここまでよくやったな感はある)

終始一律なテンポと、展開の速さと雑さ。
チューバッカ死にました→生きてました。C-3PO記憶なくなります→復旧しますという同じような展開の連続と、最後のレンとレイの謎のキス。『最後のジェダイ』のフィンとローズのキスみたいに1作に1回はキスを入れるようにディズニーからノルマ課せられているのか!?と疑問に思ってしまう。

復活したパルパティーンもEP6のただのリピートで、「お前の友達はもうすぐ全滅するぞ」的な展開はまたかよ思ってしまう。そもそも皇帝が輝いていたのはEP456じゃなくてEP123だと思うのでそっちのシーンを活用して欲しかった。
何よりレイに自分を殺させる事が目的なのに、レンが参戦に来たぐらいで作戦失敗みたいに2人とも殺そうとしたり、「お前らのフォースを吸ってワシが真の復活じゃ!ガッハハ」は流石に行き当たりばったり過ぎる。春映画かよ。

エンドクレジットを見ていると、一応キャラクター名とキャストがクレジットされており、あの時聞こえたのは10人の声で、その大半が明白になっている。
オビワン・ケノービ
アナキン・スカイウォーカー
アソーカ・タノ(『クローンウォーズ』『反乱者たち』等に登場)
クワイ=ガン・ジン
メイス・ウィンドゥ(サミュエル・L・ジャクソン)
ケイナン・ジャラス(『反乱者たち』等に登場)
ルミナーラ・アンドゥリ(EP2や『クローンウォーズ』に登場)
アイラ・セキュラ(EP2&3に登場)
アディ・ガリア(EP1&EP2や『クローンウォーズ』に登場)
ヨーダ

スカイウォーカーが血統ではなく概念になりつつある。
本作の最後、レイはスカイウォーカーを名乗るよりも「私はレイ・パルパティーン、ジェダイよ」
って名乗ってくれた方が個人的には熱かった
というよりここでスカイウォーカー名乗ってしまったら『 スカイウォーカーの夜明け』という作品が描いた両親や血縁に縛られることなく、君はなりたい自分になれるというテーマが霞むというか、落とし所や意味が同じでも、語り口的にパルパティーン名義で良かっただろう。
レイは「パルパティーン」という名前を受け入れながらも、それでも彼女らしく、「ジェダイ」として生きていく選択をした訳で、そこで「スカイウォーカー」を名乗ってしまえば、それはフォースの物陰でパルお父さんお母さん泣いでるよ。

レイアが亡くなった事を知った時のチューバッカの悲しい咆哮が印象的な本作。
ルーク・レイア・ソロという旧作で共に冒険した友が全員亡くなって、たった独りチューイだけが取り残されてしまったのがあまりにもいたたまれなかった。「クソ!何でよりによって俺だけ生き残っちまうんだ!」という行き場の無い悲しみをぶちまける姿が観ていて悲しくなる。それでも、ソロやルークが死んだ時はピンチが目の前だったので悲しむのも最低限に動かざるえなかった訳だが、レイアの死は思う存分悲しむ事ができて、それが良かったねと心の底から思うことができた。人は悲しむ時間は必要だ。
だからこそ親友の死を乗り越え、クライマックスにランドと共に援軍をかき集めるのに更にグッと来てしまう。あの瞬間チューイは紛れもなく歴戦の英雄としての役目を果たし、そして最後数十年越しにあの勲章メダルを授けられるというオチ。
チューバッカは見た目に反して決して目立つ活躍はしないが、彼が居ないと『スター・ウォーズ』じゃないと言えるまでの存在感まで成長したなと思える。

『フォースの覚醒』の時、カイロレンが言っていた「あなたの始めた事を終わらせる」というセリフ。これはやはりスノークという帝国の支配者を倒し、自分が新たな銀河の支配者になり、帝国の安寧を完遂させる事だったのだと思う。
実際、スノークを殺す事には成功し、最高指導者になることはできた。
しかし、そんな彼の手をレイは取ることはなかった。
カイロレンの思想って基本的にアナキンと同じで、アナキンがパドメに言った「僕は議長より強い、彼も倒せばいい。僕と君で銀河を支配する。生きよう、僕らの思うがままに」なんですよね。
ダースベイダーと同じ夢を持ったカイロレンはダースベイダー同様、その野望は達成する事ができずにレイに刺され「カイロレン」は死ぬ。
そして母親が死に、ハンソロとの思い出の中で、彼は再びベンソロになる。
かつてアナキンは言った。「執着や所有欲は禁じられてる。しかし、僕は無償の愛と考えている思いやりの心は、ジェダイの生命の核心だと考えている。だから、愛を奨励しているとも言える」
この臭いセリフこそが本作の大源だと思う。
最後の最後、ベンはそんな無償の愛で愛するレイの命を復活させた。
それは蘇らせたレイへの執着ではなく、たた純粋に自分の命を落としてもレイを救いたいという「愛」からだ。
ベン自信気づいてないかもしれないが、この時彼は「愛する者を死から救う」というベイダーですら出来なかった死からの蘇生を成し遂げたのだ。
そしてそれは意図せずとも「あなたの始めた事を終わらせた」という事である。

#20191225 #1225

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筆者について

jigsaw(ジグソウ、1991年6月12日-)は日本のプログラマ、会社代表。本名は小林貴也(こばやし たかや)。主にウェブ、フロントエンド領域で活動している。カミング・スーン合同会社の代表社員。
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